SES・SIの待機(ベンチ)を減らす実務:空き予定の把握から稼働率の計算まで

お役立ち記事|要員・稼働率|2026年10月11日|トンボ合同会社

SES・SIの事業では、要員が案件に入っていない期間(待機・ベンチ)は売上が立ちません。一方で、給与などの費用は止まりません。この記事では、待機を減らすための実務を「空き予定を早く知る」「契約終了予定を管理する」「提案の重なりを管理する」「稼働率を正しく計算する」の4つに分けて整理し、最後に待機が利益に与える影響を試算します。

待機(ベンチ)が利益を削る理由

SESの売上は、おおまかには「単価×稼働人数×稼働月数」で決まります。待機中の要員は売上を生みませんが、自社の社員であれば給与は払い続けます。会社の都合で休ませる場合でも、労働基準法第26条により、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払う必要があると厚生労働省は説明しています[1]。つまり待機は「売上ゼロ・費用あり」の状態で、待機が1人減れば、その人の売上はほぼそのまま粗利の改善につながります。

待機の問題はSESに限りません。コンサルティングやシステム開発などの専門サービス会社509社を調べたSPI Researchの2026年版ベンチマークの要約によると、2025年の請求可能稼働率は66.4%で、19年間の調査で最も低い水準でした。上位20%の会社は79.5%を保っており、要約の筆者は、稼働率が下がった理由として「需要が十分に見えず、人を当てられない」ことを挙げています[2]。需要(案件)と供給(空く人)を早く突き合わせることが、待機を減らす出発点です。

稼働率の計算方法と母数の決め方

待機を減らす取り組みは、まず同じ物差しで測ることから始まります。よく使う計算式は次の2つです。

人数ベース:要員稼働率(%)= 稼働中の人数 ÷ 対象の人数 × 100
人日ベース:要員稼働率(%)= 稼働した人日 ÷ 稼働できた人日 × 100

人数ベースは月末時点の状態を見るのに向き、人日ベースは月の途中で空いた・入った人の影響まで反映できます。会議では人数ベースで現状をつかみ、月次の振り返りでは人日ベースで損失を確かめる、という使い分けが実務的です。

数字がぶれる最大の原因は「母数(対象の人数)」の決め方です。部署ごとに数え方が違うと、比べても意味がありません。次の表のように、あらかじめ社内で決めておきます。

区分母数に入れるか(例)理由
自社社員(プロパー)入れる待機中も給与が発生し、自社の損失になるため
協力会社(BP)の要員別に集計する契約が終われば自社に残らず、待機の費用を自社が持たないことが多いため
休職中・育成中の社員除外する(理由を記録)営業努力で稼働させられないため。除外した人数は別に見る
状況が分からない人除外し、確認を急ぐ「待機」として数えると実態より悪く、「稼働」とすると良く見えるため

空き予定を早く把握する

待機は「空いてから探す」と必ず発生します。案件探し、提案、面談、契約手続きには時間がかかるため、空く日より前に動き出す必要があります。そのために、要員を次の3つの状態に分けて一覧にします。

ポイントは、「更新見込み」を営業が主観で持つのではなく、客先の担当者や現場のリーダーへの確認結果として記録することです。「たぶん継続」は確認するまで「未定」として扱い、空き予定の候補に含めておくと、取りこぼしが減ります。

契約終了予定の管理:台帳に持つべき項目

空き予定を早く知るには、要員ごとに契約の情報を1か所で管理する必要があります。表計算で管理している場合も、少なくとも次の項目をそろえておくと、週次の確認がしやすくなります。

とくに「申し出期限」は見落としやすい項目です。期限を過ぎてから終了が分かると、次の提案を始める時間がほとんど残りません。残り日数で並べ替え、期限が近い人から確認する運用にします。

提案の重なり(掛け持ち提案)を管理する

空いている人を早く決めたいあまり、同じ人を複数の案件に同時に提案することはよくあります。掛け持ち提案そのものは悪いことではありませんが、管理しないと、2社から同時に「ぜひ」と言われて片方を断る、という事態が起き、顧客の信頼を失います。

段階を決めて、人ごとに見えるようにする

提案の段階を社内で統一し、要員1人ごとに「どの案件に、どの段階で出ているか」が見える状態にします。

段階(例)意味重なりのルール(例)
候補社内で提案先として検討中何件でも可
提案済顧客にスキルシートを出した同時に出す件数の上限を決める
客先確認中面談・選考が進んでいるほかの提案先に状況を伝えておく
仮確保顧客が参画を希望しているほかの提案は止める、または取り下げる

優先順位をあらかじめ決めておく

重なったときに迷わないよう、「開始が早い案件」「単価が高い案件」「本人の希望に近い案件」「直請けの案件」など、どれを優先するかを部署で決めておきます。判断の基準が決まっていれば、担当営業が個別に悩む時間も減ります。

試算:空き期間を短くすると、いくら変わるか

試算(数字はすべて仮の条件です。御社の数字に置き換えてください)

条件:自社社員50名。今月末時点で稼働45名・空き5名。平均単価は月70万円。来月に契約終了を迎える人が6名いて、更新見込みは「継続」3名・「終了」2名・「未定」1名。

今月の稼働率 = 45 ÷ 50 × 100 = 90%
来月の空き予定 = 終了2名 + 未定1名 = 最大3名
空き予定の人が平均1.5か月空く場合の売上の取り逃し = 3名 × 70万円 × 1.5か月 = 315万円
空く前に提案を始め、平均0.5か月に短縮した場合 = 3名 × 70万円 × 0.5か月 = 105万円
差 = 315万円 − 105万円 = 210万円

この試算では、空き予定の3名の空く期間を1か月短くするだけで、210万円の差が出ます(3名 × 70万円 × 1か月)。すでに空いている5名が1か月早く案件に入れば、さらに 5名 × 70万円 = 350万円の売上になります。待機中も給与は発生するため、取り逃した売上の多くは、そのまま粗利の差になります。

週次で回す確認の順番

仕組みを作っても、見る習慣がなければ待機は減りません。週に1回、営業と要員の担当者が同じ画面や表を見て、次の順番で確認すると、30分程度で回せます。

  1. 空きの人:提案中の案件と段階を確認し、提案先が無い人には今週中に候補を2件以上あてる。
  2. 空き予定の人:残り日数が短い順に、更新見込みと申し出期限を確認する。「未定」は確認する人と期日を決める。
  3. 提案の重なり:仮確保・客先確認中の人について、ほかの提案先への連絡が済んでいるか確認する。
  4. 稼働率と待機見込み:今月の稼働率と、来月の待機見込み(人数と金額)を記録し、先週との差を見る。

まとめ

COMPASでできること

COMPASの要員・体制の画面では、要員を「空き/空き予定/稼働中」で切り替えて表示し、契約終了予定(あと何日か)と更新見込み(継続・終了・未定)を一覧で確認できます。要員の行には、提案中の案件とその段階(候補・提案済・客先確認中・仮確保など)が表示されるため、同じ人を重ねて出していないかをその場で確かめられます。ホームでは、稼働率と来月の待機見込み(人数と金額)を案件の状況と並べて表示します。提案の送信や要員の確定は人が行います。

要員・体制の機能を見る →

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出典

  1. 厚生労働省「会社都合で休みをとらされましたが、給料なしは労基法上ありですか?」(確かめよう労働条件 Q&A) https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/chingin/q6.html
  2. Diabsolut「What the 2026 SPI Benchmark Is Telling Us」(2026年6月18日。SPI Research「Professional Services Maturity Benchmark 2026」の要約) https://diabsolut.com/spi-benchmark-2026/

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