SESの粗利計算と単価管理:計算式・商流と粗利・案件別と担当別の見方(試算つき)

お役立ち記事|見積・粗利|2026年10月12日|トンボ合同会社

SESの利益は、要員1人ごと・契約1本ごとの粗利の積み重ねです。売上が伸びていても、商流が深い案件や協力会社の要員が増えると、粗利率は静かに下がります。この記事では、経営者・営業責任者向けに、粗利の計算式、商流と粗利の関係、試算表、案件別・担当別に粗利を見る方法を整理します。

粗利とは:SESでの考え方

粗利(売上総利益)は、売上から売上原価を引いたものです。SESでは、売上は客先・元請けに請求する単価、売上原価は要員にかかる費用です。要員が自社社員(プロパー)なら人件費、協力会社(BP)の要員なら協力会社に支払う仕入れの単価が原価になります。営業担当者の給与や事務所の費用は、粗利の計算には入れず、その下の販売費・一般管理費として扱います。

SESの粗利計算の式

プロパー:粗利 = 売単価 − 人件費(給与 + 会社負担の法定福利費など)
協力会社の要員:粗利 = 売単価 − 仕入単価
粗利率(%)= 粗利 ÷ 売単価 × 100

プロパーの人件費には、会社負担の保険料を入れる

プロパーの原価を給与だけで計算すると、粗利を多く見積もってしまいます。会社が負担する主な保険料率は次のとおりです。

保険料率(全体)会社負担
厚生年金保険(一般)18.300%[1]9.15%(労使折半)
健康保険(協会けんぽ・東京都、2026年度)9.85%[2]4.925%(労使折半)
介護保険(40〜64歳の人のみ、2026年度)1.62%[2]0.81%(労使折半)
雇用保険(一般の事業、2026年度)1.35%[3]0.85%
子ども・子育て拠出金0.36%[1]0.36%(事業主が全額負担)

40歳未満の社員なら、会社負担は合計で約15.3%です(9.15%+4.925%+0.85%+0.36%=15.285%)。令和8年4月分からは、別途、子ども・子育て支援金0.23%がかかります[2](労使の負担割合は出典[2]に記載がないため、この合計には含めていません)。このほか労災保険料や賞与・交通費なども原価になるため、自社の実額で置き換えてください。健康保険の料率は加入している健康保険と都道府県によって異なります。

精算の条件がある場合

稼働時間の上限・下限を決めて、超えた分・足りない分を精算する契約では、月ごとに売上が変わります。協力会社との契約にも精算がある場合は原価も動くため、粗利は「見積時」と「実績」の両方で見ます。

商流と粗利の関係

公正取引委員会は、ソフトウェア業を「多重下請構造型のサプライチェーン」と位置づけて実態調査を行っています[4]。商流の各段階の会社が差額を取るため、同じ客先の同じ仕事でも、自社が何次で受けるかで手元に届く単価は変わります。

試算(数字はすべて仮の条件です)

条件:客先(エンド)が月100万円で発注し、各社が受け取った額の10%を差し引いて次の会社に発注する場合。

元請けが受け取る単価 = 100万円
2次が受け取る単価 = 100万円 × 0.9 = 90万円
3次が受け取る単価 = 90万円 × 0.9 = 81万円

同じ要員・同じ仕事でも、3次で受けると直請けより19万円少ない単価になります。

試算:契約の形ごとの粗利と粗利率

試算(数字はすべて仮の条件です。御社の数字に置き換えてください)

条件:プロパーは40歳未満・月給40万円。会社負担の保険料などを15.285%として、月給を保険料の計算の基準とみなした簡易計算(40万円 × 15.285% = 6.114万円、人件費 46.114万円)。賞与・交通費などは含めていません。

契約の形売単価原価粗利粗利率
プロパー・直請け75万円46.114万円28.886万円約38.5%
プロパー・2次65万円46.114万円18.886万円約29.1%
協力会社の要員・自社が1次70万円60万円10万円約14.3%
協力会社の要員・自社が2次62万円55万円7万円約11.3%

プロパーは待機中も人件費がかかる点に注意が必要です。1行目の要員が年に1か月待機した場合、年間の売上は 75万円 × 11か月 = 825万円、人件費は 46.114万円 × 12か月 = 553.368万円、粗利は 271.632万円で、粗利率は約32.9%に下がります。

SESの粗利率はどのくらいですか(平均・相場)

SESに限った粗利率の平均を示す公的な統計は、本記事の調査範囲では見つかりませんでした。上の試算のとおり、粗利率はプロパーと協力会社の比率、商流、待機の長さで大きく変わるため、他社の「平均」と比べても打ち手は決まりません。自社の案件を同じ式で毎月並べ、社内で決めた基準を下回る案件を見つける方が実務に効きます。

基準を決めるときは、人件費の上昇も織り込みます。連合の2026年春季生活闘争の最終集計では、賃上げ率は5.01%(従業員300人未満の組合は4.69%)でした[5]。単価が据え置きのままなら、プロパーの粗利率は年々下がります。

SESの単価管理:台帳に持つ項目

粗利の管理方法:案件別・担当別に見る

粗利は、見る切り口によって分かることが違います。月に1回、次の5つで並べます。

切り口分かること打ち手(例)
案件(契約1本)別基準を下回る契約次の更新で単価を交渉する
要員別待機を含めた年間の粗利空き予定の人の提案を早める
担当営業別粗利額・粗利率の差と、その理由商流や単価交渉の進め方を共有する
顧客別取引が多くても粗利が薄い顧客直接取引への切り替えを狙う
商流別直請けと2次以下の比率直請けの比率を目標にする

担当営業別に見るときは、粗利率だけで評価しないことが大切です。協力会社の要員を多く扱う担当は粗利率が低く出やすいため、粗利額とあわせて見ます。見積時の粗利と実績の粗利に差が出た案件は、理由を記録しておくと、次の見積の精度が上がります。

まとめ

COMPASでできること

COMPASの概算見積(SES)では、役割・スキルごとの月額単価・人数・期間から概算額を出し、調達月額(原価)を入れると粗利も計算します。見積は版ごとに粗利を表示し、粗利が社内の基準を下回る版には役員承認が必要であることが表示されます。受注した案件では、見積と実績の差を理由つきで記録できます。ホームでは平均単価と直接取引の比率を、1on1支援の画面では担当者ごとの平均粗利率を確認できます。要員・体制の画面には、要員ごとの単価帯と、協力会社の要員の商流(直請け・2次など)が表示されます。

見積と承認の機能を見る → 要員・体制の機能を見る → 会議とマネジメントの機能を見る →

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出典

  1. 日本年金機構「【厚生年金保険】厚生年金基金に加入する一般・坑内員の被保険者の方【保険料調整制度適用】」(一般の被保険者の本来の保険料率 18.300%) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hokenryochosei/keisan.files/kikinhokenryochosei.pdf
  2. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/rate_prefectures/r08
  3. 山形労働局「令和8年度の雇用保険料率について」 https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/koyouhoken-20260316.html
  4. 公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書について」(2022年6月29日) https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/220629_software.html
  5. 日本労働組合総連合会「3年連続の5%超え!~2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について~」(2026年7月3日) https://jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2026/yokyu_kaito/kaito/press_no7.pdf

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